理事長からのご挨拶

~理事長就任にあたって~

平田 勇人

日本経営実務法学会理事長

朝日大法学部(兼)法学研究科教授

博士(法学・明学大),博士(工学・東工大)

 

 第23回日本経営実務法学会総会において,当学会理事長に就任しました。就任に当たり会員の皆様に一言ご挨拶申し上げます。

 日本経営実務法学会は,経営実務に係る法的諸問題に関して,経営実務に関する法律を研究する学者,弁護士,司法書士,行政書士,公認会計士,税理士,社会保険労務士,そして会社員(会社に勤めながら研究従事)によって構成される団体です。縦割りになりがちな学術団体の場で,違う分野の研究者と研鑽ができる横割りの研究団体です。

 憲法,民法,刑法,商法,民事訴訟法,行政法,税法,知的財産法,独占禁止法,民事執行・保全法,倒産法,労働法,法社会学といった分野の研究者が参加し,近年ではスポーツ法学,法教育(オノマトペとの関連),政治学,環境法,人工知能と法,さらにはSDGs(持続可能な開発目標)の研究者も参加しています。

 プラトンやアリストテレスが活躍したギリシャ時代には,哲学の中にほとんどの分野が含まれていましたが,やがてそれらは細分化され,今日では狭い分野で縦割りに多くの学会が林立しています。しかし,新型コロナに代表される現代的諸問題は,一つの分野では解決できないほど複雑な様相を呈しており,様々な分野を統合してはじめて解決の糸口が見えてくるのではないでしょうか。私自身,博士(法学)と博士(工学)の2つの領域で博士号を取得する中で,「知の通底」を感じました。

 学会誌は,学会誌編集委員会が「査読付き論文」と「査読無し論文」についてそれぞれ受付,さらには経営実務法レポートや,経営実務法トピックスも受け付けています。なかなか発表する機会に恵まれないが上昇志向のある研究者の皆様,現在会社等に勤めながら独自に研究しているが発表の機会がない皆様,実務家で同じく独自に研究しているが発表の機会に恵まれない皆様,当学会はそうした皆様に門戸を開いて,夢の実現に向けてお手伝いしてまいります。

 また,今後も国際的な活動についても積極的に関わる必要があります。これまで,中国の華東政法大学との共催で国際シンポジウムを開催してきました。さらに本学会員の下條芳明会員,出雲孝会員,亀田研会員,そして私が,タイ王国のタンマサート大学と学術交流を図り,さらにはタイ王国の憲法裁判所とも学術交流を図ってきました。今後は中国のみならず,タイ王国との学術交流を活性化し,さらに学会の国際化を推進したいと思います。

 さらに,コロナ時代にも対応できるよう今年度からZoom会議システムを併用して,今まで以上に学会参加者が増加したことは誠に喜ばしいことでした。学会運営に当たった神戸学院大学の恩地紀代子副理事長と中村先生他,関係者の皆様に惜しみない協力をしていただき,この場をお借りして感謝申し上げます。

 これまでの理事長を務められた先生方を振り返ってみますと,石川明先生,波光巌先生,加賀山茂先生,生駒正文先生といった,各分野で活躍されてきた錚々たる先生方が学会運営と発展に尽力されて来られましたが,先輩の諸先生方の思いを引き継いで,微力ではありますが,全力を尽くす所存です。今後とも皆様方のご協力・ご支援を賜りながら学会が発展するように願いつつ結びの言葉としたいと思います。